五十肩が大変だ

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腱板炎

 これだけネットが普及し、情報がいたる所から入るようになると返ってわかりにくくなってくることもある気がします。

 五十肩などはまさにこのいい例のような気がするので、今日は皆さんと五十肩について考えたいと思います。

 五十肩という言い方は江戸時代の文献に出てきており、かなり昔から日本人を苦しめてきた疾患のようです。
英語ではフローズンショルダーと言います。暑い季節に聞くとなんか涼しげな感じを受けますが、直訳すると「凍った肩」ですね。この言い方が一番この疾患を的確に表現していると思うのですが、日本語の疾患名だと肩関節周囲炎とかになり、一般の人にはなんだか縁遠く聞こえてきて、わかり易い表現として「五十肩」という呼び名が広く一般に浸透しています。

 実はこの五十肩はその病態に関して世界中で諸説入り乱れており、まだその実態がよくわかっていません。
テレビなどで「これが五十肩の正体だ」なんて番組がありましたが、よく調べてみるとどれもある学者や研究者の発見したこれから医学的に検証していかなくてはいけない仮説や新説です。
また、一旦五十肩と診断されても、実はよくよく調べてみると本当の意味での五十肩とは言えない状態の人も多く含まれている場合も多いです。

 本当の意味での五十肩という言い方も変ですが、先ほど挙げた病名「肩関節周囲炎」である「フローズンショルダー」がそのものを指しているのですが、実は五十肩と呼ばれる肩の痛みが主訴の疾患はたくさんあるのです。
現在、多くの医療機関ではレントゲン検査で骨に異常がなければほぼ間違いなく肩の痛みを訴えてきた患者さんには五十肩という診断名を告げます。
 それに対して行う治療法がある程度確立しており、それを行えばほぼ7割の人の痛みが取れると言われているからです。

 ところが実態はどうでしょうか。肩の痛みをつくる原因は骨以外にも多く存在しており、そのことを知らされないまま自分の肩の痛みは五十肩なんだと理解し、五十肩に良いとされるエクササイズなどをしてかえってこじらせている人が本当に多いです。

 フローズンショルダー以外にどんなものがあるかと言いますと、五十肩様神経痛と呼ばれるものがあります。これなどは画像上ではまったく正常であるにもかかわらず、まさに五十肩のように痛みがあるのが特徴です。拘縮がほとんどないので数回の治療で治ってしまうのは大抵このタイプです。

 次にポピュラーな疾患としてインピンジメント症候群。これは運動や転倒して手をついたりなど肩関節に何らかの負担がかかった時に起きる軟部組織や筋肉性の疾患です。肩の内部に存在する筋肉が腫れたり、肩関節内部の関節液が増えて痛み出すものです。最近は超音波を使って内部の様子が動かしながら観察できるようになったので、これら関節内の変化が手に取るようにわかってきました。これも骨には異常がないので五十肩と診断されることが多いです。しかし、肩関節の内部に負担がかかったことで起きている疾患ですから、五十肩のように無理やり動かすことは返って悪化させることにつながります。繊細な治療が求められる疾患と言えるでしょう。

 さらにこれも意外に多いのですが、腱板断裂。肩の内部の筋肉が骨から剥がれて断裂しているケースです。これも全く五十肩症状です。ほかの病院で診てもらっていたけどなかなか治らないから来たなんて患者さんの多くが超音波画像で見てみるとこの疾患でした。レントゲンには筋肉の断裂が映らないために見落とされているケースが非常に多いです。腱が切れているために肩関節の内部に水腫が溜まり、腱が剥がれた骨の表面はデコボコになっています。このときに肩を回したり、重いものを持って引っ張ったりしたら大変です。

 一番強い痛みを訴えてくるケースが石灰沈着性腱板炎。この疾患の大抵の患者さんは斧で腕を切り落としたいと言います。それほど痛みが強いのでしょう。見ていてこれだけは自分もなりたくないなあと思います。これも当院にある超音波画像診断装置を使うとすぐに調べられます。肩関節の中に骨のように硬い固まりが出来上がり肩の動きを制限してしまうのです。このときも運動は厳禁です。肩を回す運動は反って症状を悪化させることになります。

 これ以外にも肩関節の痛みをつくる疾患はまだ数多く存在します。肩は動きが大きいだけに損傷する箇所も程度も種々様々にあるということです。
 また、傷めるとなかなか治りにくい関節でもあります。何故なら肩を支えている筋肉には腕全体で約4キロの重さが架かってくるからです。いまどき4キロのノートパソコンは売っていませんが想像しただけでその重さに震えますよね。この重みが肩に負担をかけているので、酷い時は三角巾などで吊って上げるのもひとつの選択肢になります。

 ここまで読まれたらわかったと思いますが、肩が痛いからといって何でもかんでも「肩を動かしたほうがいい。動かさないと動かなくなっちゃうよ。」というアドバイスは仮に自分がかつてそうだったからといってもかなり無責任で危険なはなしです。

 僕が診察にこだわるのもこういう背景からです。多くの患者さんを診てきて、五十肩という大きな枠で診ていては痛い肩を動かしたほうがいいのかどうか、動かすならどういう動きが良いのか、どういう動きなら動かせるのか、そういう細かな指導は検査診察がなければアドバイスできないとわかっているからです。

 ネットを開いて五十肩で検索するとすごい情報量が手に入ります。でもどんな五十肩なのかの説明もないままに、すぐに治るような宣伝文句の薬や治療法が氾濫しているのも事実です。

 毎週僕の身体についての考え方などをいろんな形で発信していますが、この情報が少しでも皆様の情報整理にお役に立てれば幸いです。


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