鍼灸師という職業

タイトル名に書かれている「鍼」という字。

実は鍼灸学校へ入学願書を出しに行ったにもかかわらず、僕はこの字が読めず事務の方に読み方を聞いてしまったことがあります。

今思い出しても恥ずかしい限り。

この業界の方がこのブログをお読みになったらきっとお怒りになることでしょう。

でも、そのときの僕はそんな軽い気持ちで試験を受けてしまいました。

大学卒業後一旦は企業に就職したものの3年ほどした後、一生その仕事を続けられるかという自問に答えを出して次も決めずに辞めてしまいました。

語学を生かした職業につこうと考えた僕は、学生時代では考えられないほど勉強して通訳の資格試験に望みましたが、見事に不合格。

どうしたものか迷っていたときに、とりあえずどこかの学校にもぐりこもうと秋入学のできる学校を探して決めたのが高田馬場にある鍼灸学校だったのです。

入れたのは良かったものの、どうしたらいいのか見当がつかない。

入学式のときに隣りに座った僕よりも明らかに若い同級生に話しかけました。

「授業が終わったらどうしているの?」

若いと思った彼は実は接骨の免許を持った立派な先生でした。

そしてその彼にこの業界のことをレクチャーしてもらいました。

「いい技術を身につけたければ、良い先生につくこと。」

彼のアドバイスは彼の発しているオーラと相まって非常に説得力があります。

僕は彼が推薦する鍼の上手な先生のところに行ってみることにしました。

入学式が終わったその足で板橋へ。

先生の治療院は商店街のビルの2階にありました。

これがわが師匠故浅利昇司先生との出会いです。

ここから約5年間の修行時代を経て、師匠に追い出されるように僕は開業します。

鍼灸とか接骨という職業にまったくあこがれもなく、ただ学生という肩書きがほしいだけで入学したウツケ者がここまでやってこれたのは浅利先生という心の恩師がいてくれたおかげです。

先生と出会い、僕はそれまでの方向性を180以上変えて鍼灸師として食べていく決意をしました。

そのくらい先生とその治療院は魅力にあふれていたのです。

人がどうやって自分の職業を決めていくのか僕は知りませんが、僕にはこれが運命だったように思えます。

僕はこの職業を通して人間としても大人になり、いろんな人と出会い、様々なことを学ばせてもらいました。

そして鍼灸・接骨という世界は知らない人にはまったくもって未知の世界だと思いますが、

そんな人たちにも「世の中にはこういう治療方法もあるんですよ」と教えてあげたいと思っています。

うちの治療院に来る患者さんのほとんどは鍼灸も接骨も初めてという方たちです。

「鍼って痛くないの?」と言いつつ、何かを期待している表情が見て取れるので、

「大丈夫!」ってお答えしています。

いまや鍼灸は世界中に広まっています。

うちにも欧米人が来院されます。

接骨だって立派な手技療法です。アメリカやヨーロッパにも手技療法はあるんですよ。

このブログからこういったメッセージを発信していきたいと思っています。


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