一日の仕事が終わって家に帰り、その日の疲れを取るときに湯船にゆっくりつかって温まる。
想像しただけでも僕なんかうっとりしちゃうんですが、あなたはどうですか。
日本人は世界的にみてもお風呂に入るのが大好きな国民です。
僕も風邪を引いているとき以外は毎日かならず入ります。
でもこのお風呂、じつはカラダに良いことばかりではないのです。
「えっ、お風呂が体に悪いの?」と驚かれた方もいるかもしれません。
僕も最初は耳を疑いました。
なにしろお風呂で本を読んでしまうほどお風呂をこよなく愛している自分ですから。
お風呂の入り方を厳しく注意されたのが僕の鍼灸のもうひとりの師、小林詔司先生でした。
先生は江戸時代の儒学者貝原益軒が著した『養生訓』を紐解き、現代の生活が作る病巣は何かを研究された方です。
『養生訓』第5巻のなかで「洗浴」と題して入浴に関する記述が出てきます。
このなかで益軒は冒頭から次のように記述してお風呂の入り過ぎを戒めています。
(539)湯浴(ゆあみ)は、しばしばすべからず。温気過て肌開(えひら)け、汗出で気へる。古人、「十日に一たび浴す」。むべなるかな。ふかき盤(たらい)に温湯少し入て、しばし浴すべし。湯あさければ温過(あたたかすぎ)ずして気をへらさず。盤ふかければ、風寒にあたらず。深き温湯に久しく浴して、身をあたため過すべからず。身熱し、気上り、汗出(いで)、気へる。甚害あり。又、甚温なる湯を、肩背に多くそそぐべからず。
汗をかき過ぎると、気(この場合は体力と解してもかまわないと思います)が減るから身体を温めすぎるな。
肌が開いて身体の大事な養分まで取られてしまうよ。温め過ぎると体は逆に冷えることがあるよ。ということのようです。
この「洗浴」の記述はこの後も続きますので、ご興味のある方は下のURLへアクセスしてみてください。
この話しを伺っても僕自身は半信半疑だったのですが、その後に患者さんを診ていると治り難い患者さんたちにある共通項があることに気がつきました。
そうなんです、みなさんお風呂が好きだったんです。
「毎週末土日は一日中温泉に入っている。」
「日に二度もしく三度もお風呂に入る。」
「長湯が大好き。」
もしやと思って伺ってみると、皆さんからこんな回答がありました。
こうなって来るとやはり信じないわけにいかなくなります。
そこで、今度は入浴を控えてもらいました。
少なくとも治療した日は短時間にしてもらったのです。
すると、「やはり調子がいい。」「痛くならない。」という返事です。
でも確かに風邪を引いたときやインフルエンザのときなどはお風呂に入る気になれませんよね。
あれはカラダが体力を奪われるので嫌だと本能が拒否しているのだと思います。
お風呂は身体を強力に温めるので、入りすぎると体力や養分を奪ってしまうことがあるようです。
ですから僕は患者さんには身体の調子が悪いときや、痛みが強いときはなるべくお風呂は控えるように指導しています。
そして、良くなってきたらゆっくり入ってくださいね。と伝えるようにしています。
やっぱり湯船に入って重力から開放されたときの快感はこたえられませんものね。
貝原益軒の『養生訓』
http://www.lib.nakamura-u.ac.jp/kaibara/yojokun/text.htm
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