良く患者さんから受ける質問で、
「先生、いつ頃治りますか?」というのがあります。
病態を詳しく検査するとおおよその目安はつかめます。
しかし個体差は治療してみないと分かりません。
この個体差とは、人によって本当に治り方が違うことを指しています。
画像上はほとんど変わらないように見えた肉離れの患者さん。
二人ともほとんど年齢も一緒で性差もありません。
一人は2週間ほどでまったく痛みがなくなり、画像上も非常によくなりました。
ところが、もう一人の患者さんは6週間ほどかかりました。
ふたりの治療方法はほとんど一緒で変えていません。
臨床していると歴然とした個体差があります。
この個人差はどこに由来しているのでしょうか。
本当に丈夫な体、怪我に強い身体というものがあるのかもしれません。
単なる僕の検査ミスということも十分考えられますが、
それ以外の要因として僕はその人の脳の働きに注目しています。
脳と書いてしまいましたが、心と置き換えてもよろしいかと思います。
要するにその人が身体に対してどのような状態を望んでいるか。
これによって身体の治り方が違うような気がします。
うちでは治療を始める前に毎回前回からの調子と今日の症状を聞くことにしています。
この時に患者さんはさまざまな反応を示します。
一人のひとはどのくらい良くなったかをしっかり伝えてくださいます。
もう一人の患者さんは前回の状態のことには一切触れず、今日の痛みを訴えます。
このふたり自分のからだを観ているところが全く違うのです。
一人は良くなったところを観ています。
もう一人は悪くなったところ(厳密に言うと痛い思えるところ)を観ています。
(これも臨床してきて分かることなのですが、痛いところと悪い所は必ずしも一致しません。)
こういうと二人目のひとが悪いひとのように誤解されるかもしれないので説明しますが、
決してひとが悪いわけではありません。
ただ、自分のからだに対する見方が大変厳しい感じがします。
たとえば膝の痛み。なったことがある人にしかわからない辛さがあります。
人によってはもう歩けなくなると本気で思えるものです。痛みとはそれほど心を動揺させるのです。
この時の精神状態は一種のパニック状態です。
ここをどう乗り切るか。これが大事だと思います。
まず、頭のなかに悪いことがいっぱい浮かんできます。
専門でなければないほど、想像力は勝手に暴走し悪い未来ばかりが頭に浮かびます。
ここで一番の解決策は自分の膝の状態を客観的に観ることです。
過大評価も過小評価もしないで、ありのままをしっかり観察する。
すると単に心が動揺して大騒ぎしている自分に気がついたり、
解決策が見つかったりします。
自分に厳し過ぎると自分の治癒力にも制限してしまう傾向があると思います。
僕たち医療者はそのひとのからだが持っている復元力(リモデリング)を最大限引き出せる環境作りをしているにすぎません。
骨折していれば骨が付きやすくなるように骨と骨の位置を正して固定してあげます。
でも、そこから先は患者さんのからだが頼りです。
骨の再生能力が弱ければ付かないことだってあります。
「早く治りたい」
身体を壊した人ならみんな思うこの気持ち。
お手伝いする身として自分の技術知識すべてをもっともっとレベルアップしたい。
それには、僕自身もイメージ力を高める必要があると思っています。
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