今うちに見えている患者さんで肩が痛くて上がらないという方多いです。
その中には、いわゆる五十肩といわれる肩関節周囲炎やインピンジメント症候群に分類される腱板炎や肩峰下滑液包炎、さらには腱板断裂、二頭筋長頭腱炎、肩鎖関節亜脱臼、これらに伴う骨損傷など本当に様々な病態の方が含まれています。
この中には、積極的に動かしたほうがいい場合とそうでない場合があり、また冷やしたほうがいい場合とそうでない場合があります。
肩が痛くてあがらないという同じような症状でも簡単にあげてもこれだけ違う疾患があることとその処置に違いがあることをまず患者さんには認識していただきたいとうちでは画像を撮ってご説明しております。
どうしても世間一般では五十肩が肩関節の代名詞になっていて、肩が痛いイコール五十肩という図式が出来上がってしまっています。
そのために肩が痛いひとに周囲から「動かさないと動かなくなっちゃうよ。」と言われることが度々です。
でも、今言ったように決してそうではありません。
うちでは、肩関節の画像検査を行っておりますが、一年を通して肩関節の患者さんの中から本当の意味での五十肩(英語で言うFrozen shoulder 凍った肩)は10パーセントくらいだと思います。
つまり10人来て一人いる程度です。逆に言えばほとんどの人は五十肩ではなく、それ以外の疾患だということです。
ご本人にも周囲の方たちにもまずそのことを認識していただく必要性を強く感じます。
さらに最近では、肩関節に画像上大きな問題がないのに動かない人がいることが分かってきました。
これはどういうことか。
最初は僕もひどく戸惑いましたが、肩の動きは肩関節だけで成り立っているわけではないことの証明だったのです。
通常、肩関節というと肩甲骨と上腕骨の接合部を指しています。
さらに大きく関節を捉えると肩甲骨と鎖骨の関節が入ってきます。
たいていはここまでを肩関節と呼びます。
しかし、肩を大きく動かすためにはさらに鎖骨と胸骨の関節も重要となってきます。
そして、意外にも肋骨の動きも肩甲骨の動きに関与してくるのです。
専門書でもここまで論じている本はまずありません。
肩甲骨と肋骨との間にある滑液包で炎症が起きる肩肋症候群という疾患があるのは知っていましたが、
肩関節の動きを肋骨が邪魔するとは僕は思っていませんでした。
去年の話ですが、ひどく肩の動きが悪い患者さんを診ながら、一つ一つの原因要素をチェックしていく作業を繰り返していたとき、肋骨の動きをチェックすると非常に痛がることに気がつきました。
この患者さんの肩関節の画像は本当にきれいなものだったので、僕はもっと速く治ると思っていたのです。
しかし、治るどころかどんどん痛くなる。そこで徹底的に調べ始めたわけです。
もともと肋骨に注目していたわけではないので最初は不思議に思っていたのですが、
肋骨回りの筋肉をほぐすと肩の動きが俄然よく成りだしたのです。
正確に言うと肋骨と胸骨の関節の動き、さらに胸椎と肋骨の関節の動きの二箇所を改善しました。
これで肩の痛みが和らぎ始め、次第に痛みは遠のき、動きも改善してきたのです。
これらの関節はもともとそんなに動きのある部位ではありません。
ですから普段肋骨骨折でもしていない限りそんなに注目しない部位です。
ですが、こういった体幹部の奥にある関節が動かなくなると外にある関節に障害が起きることが最近分かってきたのです。
そしてこの肋骨の関節も骨盤の動きと連動していることも分かってきました。
つまり、身体の奥で全身の関節はつながっており、ひとつとして勝手に動いてしまう関節はないということなのです。
肩とて例外ではなかったということです。
肩を動かすと一口に言ってもこれだけのことを考慮してどのような動かし方が有効なのか検討する必要があります。
次回、うちでお勧めしている肩関節の簡単なエクササイズをご紹介します。
長くなっちゃってごめんなさい。
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