これは患者さんからよく聞かれる質問です。そして答えるのがすごく難しい質問です。
僕が学生だった頃は業界全体でも本当によくわかっていなかったように思います。何しろ「気」だの「経絡」だのと一般的でない概念をいくら並べても普通の人には理解できませんから、説明にならない。だからといって現代医学的に神経に刺激するという説明では説明しきれない事象がいっぱい臨床の現場で起きています。
現在のように鍼灸の理解が現代医学の間でも深まったのはエイズが流行ったことがきっかけでした。
エイズが世界の富が集まるアメリカで流行したことにより、この未知のウイルスを研究させようとものすごいお金が動いたのです。世界中から優秀な頭脳の持ち主がアメリカに集められました。特に免疫学に関しての研究はこのとき飛躍的に進歩します。
この免疫のメカニズムを調べていくと非常に興味深い事実がわかってきました。
これまで身体の内部の情報は神経系統・免疫系統・ホルモン系統と独立して情報交換を行っていると考えられていました。情報伝達物質サイトカインがそれぞれ別々のものと思われていたからです。次々に発見されるサイトカインには名前が付けられて役割も分類されていました。ところがよくよく研究してみると実はすべて同じ物質だったことが分かったのです。さらにこのサイトカインが皮膚直下に、しかもツボといわれるところに集中して分布していることも発見されました。この化学物質サイトカインはちょっとした押圧刺激でも反応して神経・免疫・ホルモン系統にその情報を伝達することもわかっています。
こうしてエイズに罹ったひとに鍼治療は効果があると認められて欧米で保険治療として認められたわけです。
一つの悲劇が医学の進歩に繋がり、最新の医学が古く迷信的に扱われていた治療法に新しい解釈を与えるきっかけになったというのはなんとも不思議な話です。
ともかく、これ以降はり灸はすごくやり易くなりました。理解を示してくださる医師も確実に増え、こちらからの患者紹介に丁寧に対応してくださるうえに患者さんをこちらに紹介してくださる先生まで出てきたのです。
最近の僕は、上にあげた3系統以外にもう一つ別の情報伝達系として身体の組織内情報というのを意識しています。具体的には結合組織と呼ばれるものです。これについては別の機会で詳しく解説したいと思いますが、これによりはり灸の引き起こしている現象がグッと理解しやすくなりました。
最後になりますが、治療という意味ではり灸を安全に行うには医師との連携が欠かせないと僕は思っています。こちらがわからないときや重篤な疾患と鑑別すべきときは素早く検査していただき、診断を仰ぐ必要があります。いたずらにはり灸をして患者さんの不利益になるようなことは避けなければなりません。
僕ははり灸を通して+アルファの安心を皆さんにご提供したいと思っています。
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