ぼくが修業した接骨院は鍼灸が上手な先生だという評判で流行っているところでした。
僕の鍼灸学校の同級生が紹介してくれたのですが、入ってみてもその友達の言葉に嘘はなかったと思います。
何しろ患者さんが生き生きしている。「患者さんが生き生きしている?」って変な日本語ですが、本当にそんな感じを受けました。みんななんらかの痛みや不調を抱えて接骨院に来るわけですが、先生の人柄のせいでしょうか、みなさん暗くない。表情が明るくて仕事をしていても楽しい。僕はその雰囲気にすっかり参って、これを生涯の仕事にする決心をしたのです。
その時の院長先生はまさに鍼灸の達人でした。
研究熱心な上に手先も器用で、鍼もお灸も本当に上手でした。いまだに勝てた気がしません。そういう先生に最初に師事できたことは僕自身運が良かったと思っています。
先生のおかげで、僕も鍼灸を使いこなせるようになりたいとこれまで努力してきたのです。
ですからうちでは鍼もお灸も同じくらいよく使います。「鍼灸院だから両方使うのは当たり前だろう」と思われるかもしれませんが、実は案外お灸は使わないところが多いのです。
お灸っていうと煙が立って、テナントや病院施設などでは匂うものですから、使用許可が下りないことがあるのです。
また、鍼に比べて手間がかかるところも敬遠される理由に挙げられます。上手に据えられないと時間ばかりかかってなかなか効果が得られません。でもそれは施術者の問題で、本当は即効性のある良く効く治療方法なのです。
うちにも最新治療機器はいっぱい取り揃えてあります。本当に最近の機器には物凄く効果の高いものがあり、接骨院の名前にその機器の名前を冠したいくらいです。
ですがそんな治療機器でも効果がなく、お灸じゃないとダメなときが必ずあります。
今、患者さんで8年前の転倒の後遺症で苦しまれている方がいます。8年間、手から上肢全体に広がる痛みで夜も痛み止めを飲まないと寝られない状態です。
方々で診てもらって来たらしいのですが、痛みが取れない。
当院でも当初いろいろな検査をさせていただき、何回か治療しての経過を見させていただいた結果、どうも転倒した時に負傷した手の打撲傷がしっかり治らず、CRPSと言われる神経障害を引き起こして痛みが上肢全体に広がってしまった症候のようでした。
このCRPS(Complex regional pain syndrome:複合性局所疼痛症候群)というのは非常に厄介な疾患で、病態が一定でないために診断がつきにくく、そのためいまだに治療方法も確定していません。
強い神経障害が起きているところに直接治療するのはとてもリスクが高く、返って痛みを増悪させる恐れがあります。
ですから最初、患部から少し離れたところから治療をはじめて、少しずつ痛みの強いところに近づくように慎重に治療していきました。
いろいろ試した結果、治療はどうやらお灸が良いようでした。鍼も試みましたが、ほとんど効果がなく、効果の高い最新機器も歯が立ちません。お灸もやり過ぎると疼痛を誘発しますから、体の反応をそのつど確認しながら治療を進めていったのですが、やはりお灸した時が、一番痛みが取れるようでした。
そして治療を開始してから一か月半が経った今月半ば、ようやく患者さんから確信めいた表情とともに「いいみていダ」という言葉が出てくるようになりました。
この症例以外にも、骨折を含めた骨の怪我や靭帯損傷、体の深部に達した挫傷などはお灸をしてあげると本当に早く良くなります。
どうやらお灸は体の深部にある損傷を改善する作用がほかの治療より高いようです。
治療を受けている患者さんも「気持ちいい」という感想をもらす人が多いのも特徴です。
お灸はすごい。診療するたびに毎回感じています。
CRPSについては国際RSD/CRPS研究財団のホームページをご覧ください。
http://www.rsdfoundation.org/ja/ja_clinical_practice_guidelines.html
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