今日は原因がわからないまま一年半以上膝の痛みとふくらはぎのシビレに悩まされていた方の症例報告です。
患者さんは60歳の女性、普段はデスクでのお仕事を中心にされています。
当院にいらっしゃる前にいくつもの病院に通われて、ほぼ全身にわたり検査を受けてきたのですが、結局原因がわからないまま症状の改善もなくお困りだったようです。
症状は両膝の痛み。立ち上がるとすぐに膝周りがヒリヒリするような痛みが出てくる。
もうひとつは両ふくらはぎのシビレ。これは膝下からふくらはぎの外側に強く感じるようです。
最初は膝から痛み出し、すぐにふくらはぎのシビレが出てきたとのこと。
原因が思いつかなかったようですが、よくよくお話を伺うと痛くなる前にスポーツジムでステップ台を使ったエクササイズをよくやっていたそうです。
歩行痛があり、足が思うように運べないため、膝から持ち上げるような歩き方です。
膝回りの腫れはさほどありません。そのかわり下腿のむくみははっきりしている。
病院ではレントゲンもMRIも当然検査していますから、骨や半月板そのものの問題は考えにくい。となると筋肉や腱、靭帯の損傷が疑われます。
靭帯損傷がある場合は関節に異常な動揺が生まれます。しかしこれは理学的検査を行っても診られませんでした。
膝回りの筋肉や腱の問題を考える際は、ジャンパーズニー(膝蓋靭帯炎)かランナーズニー(腸脛靭帯炎)、そして鵞足(がそく)炎か膝窩(しつか)筋を中心とした後外側支持機構の損傷を頭に描いて診察していきます。
この方の場合は、超音波画像検査で腸脛(ちょうけい)靭帯のところに腫れがみつかり、このときに診られる理学検査グラスピングテストにも反応がありました。
膝関節内の水腫も軽度でこれ以外の異常所見がないことから、膝の痛みはこのランナーズニーが疑われました。
ここまで解かればあとは芋蔓式です。
この腸脛靭帯のすぐ後ろに大腿二頭筋腱があり、その腱の下から腓骨(ひこつ)神経が現われて膝下の外側の筋肉を支配。ここで神経が圧迫されれば膝下外側にシビレが現われ、足の運びは不自由になります。
案の定、ベッドに腰掛けてもらい両足をたらした状態で両足首を持ち上げてもらうと、しっかり上がりません。腓骨神経が麻痺しているときの典型的な症状です。
早速この腸脛靭帯と二頭筋腱を狙って治療したところ、腰掛けての足首の動きがスムーズに改善。ふくらはぎのシビレが収まり、立ち上がって歩いてもらうと歩行が変わっていました。一年半以上も痛みが変わらなかったのですから、ご本人の顔色が明るくなったのは言うまでもありません。
今回の症例は、諸々の検査から総合的に判断してランナーズニー(腸脛靭帯炎)とそれに伴っておきた腓骨神経麻痺と臨床診断いたしました。
実はこのふたつの疾患はどちらもそれほど珍しいものではありません。
ただこれらの疾患は画像診断が難しいためにレントゲンやMRIだけでは見つけられなかったと思います。僕自身もしっかり患部を触っていなかったら痛みの原因はわからなかったかもしれません。
今現在2週間加療していますが、経過はおおむね良好です。
患者さんと一緒に良い結果が出せるよう頑張ります。
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