今日はまず下の表をご覧ください。
これは厚労省が2年に一度行っている国民生活基礎調査のなかで、自覚症状の状況というものを性別にまとめた表です。
女性では毎回肩こりがトップ。男性は腰痛ですが、2位は肩こりとなっています。僕は20年近くこの状況を見ていますが、男女合わせたときの肩こりはほとんど不動、ダントツのトップです。
これだけ多い肩こりですが、数が多いせいなのか一般的過ぎるのかきちんとした検査が行われないまま治療をされているケースが多い気がします。
そこで、今日は幅広い年代の実症例を報告しながら肩こりについての理解を深めてもらおうと思います。
【症例1】18歳女性
肩こりは10代になる前から始まっています。この方は首と左肩の痛みを訴えて来院されました。それ以外の症状として、頭痛、腹部痛もあります。首を前後に動かすと痛みが強くなり、動かせる範囲も狭くなっています。左後方へ首を倒すと左肩から腕にかけて痛みが走ります。
このような所見の場合、頚椎そのものの問題であることがありますから、徒手検査および理学検査として神経反射の検査などを行いました。結果レントゲン検査を依頼しました。
首をまっすぐな状態で見るとわからないのですが、このように首を後ろに倒した状態でみると、7つの頚椎の下3つの椎体の間が狭くなり、骨同士がぶつかってしまっている様子が映し出されています。(丸で囲ったところの中央の骨の上下です)10代でもこのような骨の不整が始まっているケースがあります。
【症例2】73歳女性
首が凝ってしょうがないと言って来院。左上肢に軽いシビレ。うがいがしづらいとおっしゃっていました。
もともと穏やかな明るい性格の方で、本人も「(日常生活は)なんでもないのよ」とおっしゃり、徒手検査でも顕著な所見はなかったのですが、うがいのことが気になり、念のため医科に依頼しレントゲンを取っていただくと
このような頚椎の変形があることがわかりました。この方の場合は骨同士の隙間がほとんど無くなり、椎体そのものが前後にずれてしまっています。外からはうかがい知れない画像所見に正直ビックリしました。
レントゲン写真を見慣れていない方でも上と下の写真を見比べてみると骨の状態の違いがよくわかると思います。
肩こりはその状態を医学的に分析すると下記のような分類と定義づけができます。
【症例3】55歳女性
首から左肩にかけての凝りと痛みを訴えて来院。
左腕を挙げると痛みます。それ以外にも頭重感、両手のシビレ、腰の痛み、ふらつき、耳鳴り、全身のだるさと症状も多義に渡りました。
両手のシビレというのは注意が必要になります。
先の2症例でも左右どちらかにシビレが出ていましたが、両側となるとさらに身体の深部、脊髄に何らかの病変が存在することを想定して診察しないといけません。肩に痛みはありましたが動きに問題はなく、むしろ頚椎にストレスを与えると症状が強く出てきます。
医科に精査を依頼しました。
やはり医科でもレントゲン検査だけでは不十分と判断され、MRIにより椎間板がつぶれて脊髄が圧迫されていることがわかりました。
【症例4】26歳女性
1ヵ月前から肩が凝ってマッサージなどに通ったが、症状が改善しないので来院。
寝返りが打てない。右肩、右肘に痛み。右肩を外に上げていくと痛みが出てくる。などといった症状がありました。右肘の痛みがつらいとのことでしたが、この関節に異常は認められませんでした。徒手検査、神経反射などからやはり頚椎が疑われます。本人は首の痛みを感じていなかったのですが、現在の症状は美容の仕事に支障をきたすとのことでしたので、精査を依頼しました。
共通しているのは、みな自分は単に肩凝りだと思って来院していることです。全員特にこれといった怪我をしたわけではなく、日常生活をしていて症状が出てきてしまったのです。
ただ、よくよく聞いてみるとみんなそれぞれに思い当たる節はありました。
一人は仕事がハードでしたし、家族が倒れて病院への見舞いと看病で大変だった方もいました。
首が凝る前に転倒しそうになって手を突いて身体を支えたことがあったり、ちょっと前に自転車で転倒したことがあったんだけど、なんでもなかったからそのままにしていたりなどです。
多くの人の肩こりの原因をまとめると下記の表ように分類することが出来ます。
要はどこまで患者さんの訴えをしっかり聞き取れるかではないでしょうか。
次回はこの肩こりの人たちが抱えている症状にスポットを当てて、なんで肩こりが「万病の元」と言われているのかに迫りたいと思います。
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