先週末、月一で開催されている漢方勉強会に参加し、とても面白いお話しを伺ってきました。
僕は先月から当院のはり灸の治療についてこの勉強会で発表しています。
日本のはり灸は中国から伝わってきたのですが、江戸時代、幕府の鎖国政策により日本独自の治療方法が確立されます。鍼の形状も刺入方法もこのときに今現在のものになりました。
うちのはり灸の治療方法も中国の古典をベースにしていますが、日本独自の解釈になっています。そんな日本の独自性の強い診察方法を医師や薬剤師、看護師の先生方に説明してほしいといわれて発表することになりました。
今回、この勉強会に中国出身の先生がご参加されていました。僕は初めてお会いする方です。
この方は中医学に精通されていらっしゃるところから推測して本国でも鍼灸師か医師であったろうと思われます。話しの内容が非常に濃くて面白い。
僕のはり灸の話に呼応するように中国のはり灸事情を説明してくださいました。
日本の鍼に流派があるように中国にも大きく分けて2つの流派があるのだそうです。
それは先天派と後天派。
先天派とは、先天的に受け継いだ精気を中心に治療を組み立てる学派。
対する後天派は、その先天の精気を維持発展させるために絶えず滋養する精気を取り込み作り出すところを中心に治療を組み立てる学派 のようです。
日中どちらもこの2つを「先天の原気と後天の原気」と呼んで、生命を維持するために大切な大元と捉えています。
中国のはり灸は、患者さんの訴えの病状がこの2つのどちらの不調に由来しているかを考えて治療を組み立てているというわけです。
たとえば、膝が痛いと言って来院された患者さんがいたとします。
このときに中国ではその治療法を先天の気を優先に考える先生と後天の気を優先に考えて組み立てていく先生に大別できるというわけです。
この考え方に僕はとても興味をそそられました。
先天の気は腎に内蔵されているといわれ、膝の裏側を通る経絡と繋がっています。
いっぽう後天の気は消化器全般の働きを指しており、これらと関連する経絡は膝の表側を通っています。
つまり、先天派と後天派は膝の裏側と表側で対比して身体を診ていることになります。
現代医学でも、膝の表側の疼痛が裏側の組織の不具合に由来することが動画の解析から最近わかってきました。そのため表側の痛みを取るためには裏側の緊張を取る治療を行なうことになります。はり灸で言えば後天の消化器の経絡の通りを良くすることです。
また、大腿部の表側の筋肉と裏側の筋肉のアンバランスが股関節と膝関節の動きの不整に関わっているとも言われるようになっています。
これは表側の筋肉の緊張を取るためには裏側の筋肉を鍛えなくてはいけないというわけです。現代医学的にはリハビリによる裏側の筋トレです。つまり腎(先天の原気)の経絡の通りを良くして整えることに通じます。
こうやって分析するとどちらの派にも分があることがわかります。
こういう切り口で中国の先生たちが膝疾患を検討していることをとても面白いと思った次第です。
今回のことをヒントにしばらく患者さんのからだを他の部分でも先天と後天両面から眺めてみようと思います。
また新しいアイデアをもらって嬉しい勉強会でした。
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