今日ははり灸で行なった治療の症例報告です。お楽しみ下さい。
70代女性 日頃から元気が良く、いまだにお仕事もして活発に生活していらっしゃるようですが、数日前から立ったり坐ったり、階段の上り下りで右股関節に痛みが出るようになり、動き出しがつらいと来院されました。
数年前から左の肩にも違和感がありますが、そちらより今回の来院動機は右股関節の痛みを何とかしてほしいということです。
体格はしっかりしていらっしゃいます。
日中はデスクワークをしているとのこと。でも詳しく伺うと立ったり坐ったりが比較的多いようです。
以前に脊柱管症候群と診断を受けていたことから、腰の状態を調べましたが今回は特別な所見はありません。
ベッドに仰向けになってもらい、右股関節の動きをチェックすると
股関節をまげて内側に倒す動作で右臀部にはっきりとした痛みが出てきました。
この動作で痛みが殿筋に出るとなると中殿筋小殿筋と呼ばれる股関節を外側で支える筋の問題が考えられます。
これ以外では股関節インピンジメント症候群などと言った股関節の病変を疑わせる特定的な所見はありませんでした。
さてこのような場合の治療は、当然この股関節外側の筋肉の硬さを取ることを目標にしていくわけですが、
ここからが人の治療の意外と難しいところです。
この中殿筋小殿筋に緊張を作った原因を特定することが大変難しいからです。
「痛いんだから、そこに鍼をすればいいじゃないの?」と思われる方が多いですが、そううまくはいかないのです。なぜなら緊張を作った原因を取り除かないとそこに鍼をしたくらいでは痛みが取れないからです。
この殿筋は骨盤に付着しているわけですが、その一部分は背中の筋肉の筋膜に付着しています。
この背中の筋肉は背骨を支えて動かす筋肉と腹部を支える筋肉と肩を動かす筋肉の3つから出来ています。
ですから、この3つの筋肉の緊張が殿筋の緊張を作っている可能性も除去できません。
治療は股関節、腰、背中、肩の順番でターゲットを絞って行なっていきました。
案の定、この方も痛みのある股関節に治療をしても何の変化も現われません。
ところが、右の肩甲骨内縁に鍼をした結果、みごとに動作開始時の痛みが取れ、動きも改善しました。
後付けの解釈はいくらでも言えるので好きではありませんが、この事実につじつまを合わせれば、痛みのある左肩をかばって右側で仕事をこなしているうちに右肩に負担がかかり、その緊張が腰部や殿筋にまで及んだということでしょうか。
いずれにしても筋膜を通してからだの緊張はどこまでも及ぶという事実を再確認する症例です。
今後も機会があるごとに僕たちが日常で体験している症例をご報告して行こうと思います。
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