前回に引き続き今回もめまいの症状でお悩みの方の症例をご紹介したいと思います。
今回の患者さんは建設業に従事するスペシャリスト。
専門性が高く、やりがいも感じていらっしゃるのですが、ほかの人が変われない仕事のためにどうしても負担が大きくなり、ストレスも多いようです。
そのせいなのか、2年前に突然耳がまったく聞こえなくなりました。
今現在は聞こえるようにはなっていますが、その代わりにひどい耳鳴りと眩暈、それと頭痛に苦しんでいらっしゃいました。
このかたは30代という若さでありながら、すでにこれまで腰の手術を3回も受けており、もうこれ以上の手術は不可能と言われているそうです。
それでも腰の痛みは強く残っており、そのほかにも右下肢の痛みがあり、さらにかかとの痛みはひどくなると歩行ができないほどです。
このように症状が強くしかも全身多義にわたっていましたので、全身をはり灸で調整するシャクジュ治療を行うことにしました。
シャクジュ治療とは腹部から全身の状態を把握して治療していく古来の治療法です。
まず自律神経の状態が現れやすいおなかの状態をチェックします。
腹部から胸部まで前回の人が白かったのに対して、今回の方は赤みが強く、手をおなかの上に軽く載せると熱感も伝わってきます。
おへそから鳩尾(みぞおち)までの腹部の中央は弾力性が乏しく、力がない感じです。
その代わり、胸部が張って硬くなり、特に右側の鎖骨周辺に集中して圧痛がありました。
患者さんに伺うとやはりそちら側の耳鳴りや難聴が強いそうです。
顔も赤らむほど熱が上昇し、頭痛、耳鳴り、めまい、難聴などといった症状が強いこのような症状を、漢方では「肝陽上亢証」と呼びます。
体を動かしすぎても、頭を使いすぎても、こういう状態になりやすいです。
こういうときは白菜、大根、にがうり、キュウリ、トマト、豆腐、緑茶など涼性のものを食べると体の熱を奪ってくれるので良いとされています。
はり灸治療もまず体の表層の熱を取ることから始めました。
さいわい、初回の治療でうまく熱を体から取ることができ、症状の改善が見られました。どうやら治療に対する反応は良いようです。
3、4回治療が進んで熱が取れてきた頃から、症状に変化が出てきました。
それまでの耳鳴りや眩暈から徐々に腰の痛みとかかとの痛みが強くなってきたのです。
これは前回の患者さんでもそうだったのですが、「腎精不足証」と言って腎陰または腎陽が足りなくなって起きてきている症状です。
この状態でもやはり眩暈が出てきます。足の裏に赤みと自発痛が強いことから腎陰不足と診られます。
腎陰とは身体をうちに引き締める働きのことです。
この働きが弱ると体の奥に熱を蓄えることができなくなり、手足や顔などの体の先端部分に熱が出てきてしまいます。その結果、手足が火照ったり、痛くなったりする「五心煩熱」と言う症状が出てきます。
ここからはお灸を多用しました。というかお灸をしないと症状が取れないのです。
ハードな仕事を続けながらの治療でしたので、結果的には半年以上にもわたる根気のいる治療となりましたが、ご本人の治したいという思いも強く、通い切ってくださいました。
今はまだ油断すると症状が再発するときがあるので、週1回程度通院していらっしゃいますが、今年の冬には大好きなスキーへ行けるまでに無事回復されています。
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