今日10歳の女の子が足首の痛みを訴えて来院しました。
原因はバスケットボールの試合中にひねったそうです。痛いところを自分で指さしてもらうと、足首より少し足先に移動した二分靭帯(ニブンジンタイ:医学用語はすべて音読みです)の付着部分でした。
二分靭帯とは、文字通り踵骨(ショウコツ)から立方骨(リッポウコツ)と舟状骨(シュウジョウコツ)という足首の2つの骨に付く靭帯で、割と傷めやすいところではあります。
徒手検査では大した所見は得られなかったのですが、場所が場所なだけに念のために超音波画像検査を行ってみることにしました。
左右同じところを撮ってみたのですが、とくに左右差がありません。つまり二分靭帯は問題ないということになります。
「じゃあ、この子の痛みはどこから?」
仕方がないので、同じ足首の前外側の前距腓靭帯を覗いてみると、なんと靭帯損傷があり、そこに浮腫も溜まっていました。
前方引き出しテストをその場で行ってみると関節に異常可動が確認できました。
さらに驚いたのは反対側の足の画像を撮ってみた時です。こちらも前距腓靭帯が傷ついていたのです。そしてこちらにも浮腫がありました。
この女の子はミニバスを始めて3年目。チームの中心メンバーとしてかなりの運動量をこなしているのでしょう、本人も気がつかないうちに両足首を傷めていたようです。
足首の関節の中に腫れが残っている状態を足根洞症候群といいます。捻挫がちゃんと治らなかった状態を示しています。彼女の足はそういう状態だったのです。
さらに足関節の不安定性も見られます。この状態を慢性足関節不安定症(Chronic Ankle Instability : CAI)といいます。 こうなると軽いひねりでも痛くなってきます。捻挫を繰り返す人の多くはこの状態を疑ったほうが良いです。
「10歳くらいでそんなことになるの?」と思われる方もいるかと思いますが、意外に画像を撮ってみると多いのが実情です。
バスケットボールだけでなく、サッカーでも酷い足首の子を診て来ました。
最初はすごく心配しましたが、そんな子が成長して高校、大学でもレギュラーとして活躍している姿をみると人間の生命力の強さを感じます。大学生になって来院したときに画像を撮ってみたら、子供のときにひどかった足首もいつのまにかきれいになっていたからです。
このバスケットボールが大好きという女の子にも「バスケットボールを続けられるようにしようね」と最後は励まして帰しました。
このCAIという疾患で来院されている患者さんは足首の怪我で来ている人の3割から半数近くに上ります。そのくらい多いです。
こういう人たちの捻挫はすぐに痛みが引いてしまうことも多く、画像を撮っていないところでは「捻挫は固定しないほうがいい」などといった誤解を招く原因にもなっています。
捻挫で「痛みが引いた=治った」という解釈をしているとこのCAIを作る原因にもなります。
ぜひ、みなさんも捻挫をしたら、超音波画像で関節の動きを確認するようにしてください。
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