人間の膝を他の動物たちと比べると、同等の大きさを持つ動物はなんと1トン(1000㎏)を超える体重の牛さん級になります。人間の体重が幾らあっても牛を超えることはありませんから、二足歩行が如何に膝に負担がかかるのかという証左になります。 今年の3月にこの膝を傷めた患者さんがいらっしゃいました。
スポーツをして傷められたので、関節内の出血が強く、初診の時は歩行も困難でした。当院で得た所見からさらなる詳細な検査が必要となり、いつもお願いしている近隣の整形外科で診ていただいた結果は、前十字靭帯損傷と大腿骨外側顆部骨挫傷、さらに外側半月板損傷も傷めている可能性があるという重篤なものでした。 まずは固定して患部を安静に保ち、症状の推移を見守りながら次の一手、このまま保存療法で治すのか、それとも手術を選択するのかを考えることとしました。 4ヶ月を過ぎた今現在、幸いにして手術に至っていません。その最大の理由は膝の安定性が得られたからです。歩くたびに膝が崩れる、振り向くと膝が外れるなどの症状がこの手の疾患にはよく見られるのですが、この女性にはありませんでした。その代わりと言っては語弊がありますが膝が曲げにくくなってしまいました。 エコー検査で膝の内部を観察し続けたところ、当初診断が確定したところとは別の場所に健側の膝とは違う動きがあることがわかってきました。
膝のお皿の下、関節の中央にあるプニプニした柔らかいところ(膝蓋下脂肪体)の動きが悪いことが左右を比較してわかったのです。健康な膝は曲げて行くとこの脂肪体が膝の中に引き込まれるように動いて周りの組織に挟まれないようになっています。ところが患側の膝はここの脂肪体が曲げてもその場所から動けないのです。もっと正確に記述すると周りの腱や皮下組織に癒着してしまい、そちらの動きに引っ張られて動けなくなっていたのです。
このために膝の関節内で脂肪体が挟まれて膝が曲がらない状態になっていました。
今このことに気がついて、そこを引き剥がす処置(今のところ鍼が動きの鈍いところを直接狙えるので有効)を始めたところ、それまで140°止まりだった膝の屈曲角度が3回の治療で一気に155°まで曲がるようになってきました。 この軟部組織同士の癒着は、擦り傷や切り傷が治るのと同じ理由で起きています。
切れてしまった靭帯や骨などの患部だけが付いてくれればよいのですが、腫れが大きかったりすると正常であった組織同士も付いてしまうのです。これが癒着です。
今回の症例は僕にとって今までよくわからなかった脂肪体の動きを知るまたとないチャンスとなりました。これを機会にさらに癒着について勉強し研究していきたいと思っています。
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