横隔膜の筋線維を調べた研究によると、白筋線維2/3、中間筋線維1/3、赤筋線維1/30だったそうです。
白筋とは、速筋とも呼ばれる瞬発的に強い力を発揮する筋肉で、酸素を使わずにATPというエネルギーを作り出すメカニズムを持っており、無酸素運動に適しています。
赤筋とは、持続的に力を発揮するのに適した筋肉で、姿勢保持に使われる筋肉や心臓の筋肉がまさにこの筋肉です。酸素を筋肉内に貯蔵する機能を備え、さらに血管も豊富なため疲れにくいという特徴があります。
中間筋とは、上の両者のハイブリッド版。強い力を発揮しつつ、疲れにくい筋肉です。筋トレなどで白筋に負荷をかけると、このタイプの筋肉が増えると言われています。
このデータから横隔膜は瞬発力に富んだ力強い筋肉で、持久系は意外に不得意ということがわかります。
1日に2万回以上もしている呼吸の主動作筋と言われているのに、持久力がないなんてこの結果は実に不思議です。
横隔膜を腹部のほうに収縮させて息を吸い込むときに、腹横筋(ウエストを引き締める筋肉)も収縮させてお腹を膨らませずに行う呼吸法があります。この解説を読みながらやるとなんだかひどく難しく感じますが、これは誰でもみんなが日常的に行っている呼吸法で、「息む」ときの呼吸です。
重いものを持ち上げるとき、お通じのときなどみんなこの呼吸法になります。僕はスポーツジムでバーベルスクワットやベンチプレスなどをしているので、毎回この呼吸法になっていることを確認しています。こうしないと絶対に重たい重量は持ち上げられません。逆に言えば、横隔膜を使えばすごい力が出せることを人間は本能的に知っていることになります。そして横隔膜の筋線維はまさにこの「息む」のに適した構成だったわけです。
横隔膜は息を吸うための筋肉です。しかし、息を吸うことは単純に肺に酸素を取り込むというだけでなく、人間のパワーを引き出す源でもあったわけです。
このとき、息を吸う筋肉(横隔膜)と息を吐き出すための筋肉(腹横筋)を、つまり呼吸筋すべてを同時に働かせていることも大変興味深いところです。
「息」を上手に使いこなせるようになれば、人はもっと健康に楽に力強く生きられると思います。
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