最初に僕の話から。
僕がまだ6歳の頃の話です。テレビで見たスーパーマンに憧れて風呂敷をマント代わりに首に巻き、いとこの家にあったトラックの荷台からいとこや近所の友達たちと飛び降りて遊んでいたところ、靴の底に地面の泥がついて滑り荷台の上から地面に頭から落ちてしまいました。
泣いて家に戻った僕は父親に叱られながら病院へ直行、鎖骨骨折と診断を受けギプス固定されたのです。暑い夏の1ヶ月間上半身にギプスを巻かれて閉口したのを覚えています。
ひと月もしたら鎖骨は治ったのですが、その後から僕は頭痛持ちになってしまいました。風邪を引いて熱が出る前にまず頭が痛くなる。割れそうなくらいの痛みで泣いて母親に頭を軽くたたいてもらっていたのを憶えています。それ以外にも今で言うメニエールの症状も体験しました。特に本などを夢中で読んでいるときが多かったのですが、何かに長時間集中していると突然目の前のものが大きく見えたり、遠くの物音が近くに聞こえたり、本のページをめくる音がものすごい轟音に聞こえたり。子供の僕には何がなんだかわからずとにかく目を瞑って横になり静かにして収まるのをじっと待っていました。
何でそうなってしまったのか。大人になってこの仕事についてからようやくその理由がわかりました。夜中に手に痺れを感じるようになり、いつもお世話になっている整形外科の先生にレントゲン検査をしていただいたところ、僕の首は骨の間が狭くなってそこを通る神経が挟まれていることがわかりました。首を傷める怪我はあとにも先にもあのときだけです。どうやら僕はあの事故で鎖骨だけではなく首も傷めていたのです。
頚椎を傷めると首や肩腕の痛みだけでなく、自律神経症状が現れることがこれまでの研究でわかっています。首の周辺には自律神経のセンサーが多く集まっていることが知られており、そのために症状はほぼ全身に及びます。
頭痛、目の奥の痛み、あごの痛み、喉の異物感、耳鳴り、めまい、胸痛、吐き気、胃痛、腰痛、不眠、倦怠感、嗜眠(寝ても寝ても寝たりない感じ)、生理痛や多くの婦人科疾患などなど、まだまだあります。以前からバレリュー症候群と言われてきました。最近もいろんな先生が頚椎に注目して本や論文を出しています。
僕の子供の頃の症状もまさにこの自律神経症状です。検査結果から「なるほどな」とこれまでの自分の子供の頃からの体調が妙に納得できました。
頚椎を傷めるとこんなに症状が多義に現れるのにそれほどこの事実が知られないのは、現代医学の細分化にその要因のひとつがあるかもしれません。細分化することで一つ一つの疾患を掘り下げて研究することが出来ましたが、そのかわり科をまたいで及ぶような疾患の情報は共有し難いという盲点が生まれている気がします。頭痛は脳神経外科、目は眼科、顎は歯科、耳は耳鼻咽喉科、胸の痛みは循環器内科、というように掛かるわけですがどの科でも異常が認められないと仕舞いには自律神経失調症と診断されることが多い。
それでもさらに不調を訴えると心療内科などで安定剤処方となります。誰も「首を診てもらったら」とはならない。
不思議ですが、これには少し訳もあると思っています。頚椎による自律神経症状は関節運動学などと同様で、画像検査や血液検査などに現れないのです。事象は認められますが異論を唱える人が必ず現れます。科学的根拠を示せというのが彼らの主張です。
ちょっと話しが難しくなってしまうのでこの話題はここまでにしますが、自分の専門分野については熟知していても他科の疾患についてはよくわからないというのが偽らざるところだと思います。(だって僕がそうですから)
自分のこれまでの症状から頚椎がいかに大切か身に沁みて感じている僕として、やはり皆さんを診る際に頚椎は特に注意してみている箇所になります。
薬漬けということばが存在しているので使わせていただきますが、そうならないもしくは少しでも薬が減らせるように不調の原因を多角的に探り、それが首であるならばしっかりそこを治療していく。そういう治療を自分も受けたいし、皆さんにもして行きたいと目指しています。
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