身体の痛みを引き起こす原因として良く耳にする神経痛について今回は僕のお話をしたいと思います。
実は神経痛とは症状を表わしていますが、原因が特定できないときに使う病名と言った方が正確です。
有名なところでは、坐骨神経痛、肋間神経痛、三叉神経痛などでしょうか。
これら神経痛を引き起こす原因と考えられるものはヘルペスウイルス感染(帯状疱疹)なども含めて本当に様々です。約40種類くらいの原因が報告されています。
この中にはレントゲンや画像検査でも分からないものもあります。たとえば寒冷、肉体的疲労、精神的疲労などです。
さらに風邪などの感染症でも神経痛は引き起こされることがあります。
このために症状を聞いただけではその場で原因を特定することが困難な場合が多いわけです。熱の有無、画像検査、神経反射テスト、知覚神経テスト、などはその場で結果が分かりますが、感染症などを調べる血液検査は菌を培養するためにどうしても日数がかかります。さらにガンも含めて精査する必要がある場合も。
こういうときに症状名として神経痛という病名が使われるわけです。
ここでこの神経痛で体験した僕の古い苦い経験談をお話しましょう。
本当に恥ずかしい話なのですが、僕の成長を大きく促すきっかけとなったエピソードなので書かせていただきます。
患者さんはまだ50代の女性でした。背中が急に痛くなったと言って来院。海外旅行を2、3週間後に控えており、それまでに治して欲しいと訴えていらっしゃいました。痛みの部位、受傷機転、動作痛や介達痛などから肋間神経痛と判断。いろいろ旅行の準備や家の仕事などが重なって疲労が溜まっていたということもあり、本人も荷物を片付けた時に傷めたんだと思うと言われたので、それなら2週間もあれば治りますよとお話して治療を開始しました。本当に1週間もしないうちに痛みが収まり出し、呼吸も楽になったと言われて喜んで旅行に行かれました。ここまでは良かったんです。
ご旅行から戻られて程なくしてから痛みが再発したと再来院されました。前回のことがあったのでご旅行の疲れが出たのだろうと僕もそれほど気にせず治療を再開。これが結果的に良くなかったんです。
今度は前回のように改善していきません。良くなるのにまた痛くなる。
神経痛を引き起こす原因は40種類くらいあると先ほど書きました。寒冷や風邪などの感染症、疲労なども原因になります。ですから軽い熱などがあってもすぐに重篤な病気を想起することが当時の僕には出来ませんでした。原因を特定するのに一番怖いのが思い込みなのですが、当時の僕はまさにこの思い込み状態だったのです。骨折を疑う所見もなく、治療により改善する兆しもあったことから、自分の診断を疑ってみるという余裕もなく、2週間ほど治療してしまいました。
そのあと突然いらっしゃらなくなったので不思議に思っていたら、近所の人から別の治療院を勧められてそちらに通っているようだと風の噂で聞き、その後2ヶ月ほどして病院で検査を受けた結果肺がんだったことがわかったと知らされたのです。
いらっしゃらなくなっていたとは言え、自分が最初に見ていたのは間違いない訳です。強い自責の念に駆られて、しばらくは診療も手につきませんでした。
「診察は怖い」と心の底から思い知らされました。
「君たちは何のために白衣を着ると思うか。」これは僕の恩師が授業中に言われた言葉です。
今の僕なら「責任感」だと感じます。「怖い」と言って患者さんの前から逃げることは出来ません。ひとりでも多くの人に有益な治療を施せるように日々勉強する。治療方法を改善する。自分の診断を見直す。
僕の診察に対する姿勢はこの時の苦い思いをもうしたくないという切実な願いから出ているものです。
神経痛にかぎりませんが、自分の数々の失敗が僕をより慎重に丁寧に診察するように導いてくれているのは間違いありません。
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