先日、同時期に開業した学生時代からの気の置けない友人と久しぶりに会いました。
この友人とは学生時代、恋人の相談までしあった仲。飾らない性格はその当時から今の今まで変わらずで、僕を都内で開かれた勉強会に誘っておきながら、会場に入ると隅の柱の影の方に座ろうと言い出す始末。なんだかその日は出来の悪い学生になった気分で、それはそれで楽しかったりします。
彼の名誉のためにも言っておきますが、鍼灸の腕前はかなりのレベルで、研究熱心な彼に僕はずいぶんと鍼についても教えてもらいました。
とにかく自分がしたいようにしかふるまえない友人は患者さんが少ないと嘆きつつ、「患者さんが増えて仕事が忙しくなると嫌になっちゃうんだよ」と言って笑っています。まったく悪気がないので聞いているこっちまで肩の力が抜けてちょうどいい塩梅です。
その彼でも「もっと鍼がうまくなりたい」と言います。この辺で気が合うので付き合っていて楽しいのかもしれません。これについてはまったく僕も同感だからです。
彼の言う「うまくなりたい」は「なかなか治せない患者さんを早く治せるようになりたい」という意味です。
開業というと聞こえはいいのですが、実際開業してみるとものすごいプレッシャーに押しつぶれそうになります。僕も開業当初修行時代の厳しい院長のもとに何度も戻りたいと思いました。
その思いを跳ね返せてきたのは目の前の患者さんをとにかく「治したい」という強い気持ちです。
二人ともそういう思いは強く持っているのですが、どうしても跳ね返される。どんなに経験を積んでも知識を蓄えても跳ね返されるときが必ずあります。治したいという思いが強ければ強いほどこのときの悔しさは倍増です。
人の身体とは本当に不思議なもので、治療の醍醐味もここにあるのですが実に難しい。
先日もそういう意味で悔しい思いをした患者さんがいました。患者さんの疾患は特定されており、そのために開発された特効薬もすでにあるのですが治らない。病院もお手上げの状態です。そこはわかっていて挑んだわけなのですがやっぱり僕自身が満足できる結果にならなかった。
治せないとき、診察段階で疾患を見落としていないか、正しく身体の状態を把握できているか、治療手段や手技は間違っていないか、常に自問しています。
人の身体の変化は本当にわずかなテクニックの差で激変することもあります。ですから技術を磨く努力は怠れません。ただ、いくら技術が高くても人の身体に対する知識が低いと宝の持ち腐れになります。もちろん知識は臨床で使えなくては意味がありません。ですから、技術と知識は車の両輪のように両方が揃っていることが望ましいのです。
今回のケースは今の僕では理解し把握できない何かがその患者さんにおきていたのでしょう。自分の完全な力不足です。
僕や友人が治せなくて悔しいと感じるのは、治療行為そのものが非常にプリミティブな、人間の人に対するごく自然な感情や欲求に由来しているからだと考えています。自分の命と人の命に違いを感じていない行為というニュアンスです。
こういう思いを共有する仲間とこれからも励まし合い、時に弱音を吐きながら、真摯に謙虚な姿勢で治療と向き合っていきたいです。
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