ひとことで「かかとが痛い」といっても実はいろんなタイプがあります。
今日は、最近来院されるケースが多い踵の痛みについてお話しましょう。
踵は足首のなかでは最も大きな骨で、がっしりとした構造になっています。
数値が安定しているために骨密度を測るときのインジケーターとしても使われるくらいです。
この骨にはご存じのようにアキレス腱がつきます。アキレス腱はふくらはぎを構成する筋肉、内外側腓腹筋とヒラメ筋それに足底筋の四つの筋肉で出来ていますから、踵にかかる負担は相当なものです。このアキレス腱の付着部が痛くなる人が大勢います。
踵の底、足裏部分には短指屈筋と言われる足の指全部に伸びる筋肉がついています。
「屈筋」と言われているように、足指を曲げるときに使う筋肉です。この筋肉を傷めるとかかとの接地面で、やや指先寄りに痛みを感じるようになります。押してみるとピンポイントで痛いところがあります。ちょうど土ふまずの付け根のあたりです。
この二か所がかかとの痛みの大半を占めています。両方とも筋肉の終点である腱の付着部が痛くなるわけです。どちらもここの損傷のひどい人は、この筋肉の腱が修復する過程で結晶化してレントゲンとか超音波画像で骨化しているように見えます。専門的には「骨のとげ」と書いて「骨棘(コツキョク)」と呼んでいます。(ただし仮にこの突起が出来てしまっても痛みは取れますので安心してください)
朝起きたときにかかとが痛くて足がつけないひとは大抵このどちらかが痛くなっています。ということはふくらはぎの筋肉か足裏の筋肉、もしくはその両方が硬くなっていることになります。なぜなら、筋肉が硬くなるから腱がこわばって踵を刺激するからです。こういう痛みの場合、少し動いて筋肉がゆるんでくると痛みがやわらぎます。
そうでなくて、全く痛くて足がつけない人もいます。アキレス腱の付着部が赤くなり、熱を持ってしまうケースです。日本語の病名がないのですが、アキレス腱と踵の骨の間にあるほんとうに小さな滑膜に炎症が起きるタイプです。ランニングなどを繰り返しているうちになることが多いです。これはもうひどい痛みで、まず踵をついて歩けません。しっかりと固定してあげる必要があります。
本人に自覚症状がないのに、押してみると踵に痛みを感じる人もいます。
マッサージをするとき、僕は足の裏もマッサージすることがあります。これは全身の状態がよく足首に現れていることが多いからです。足の裏の筋肉が硬くなっている人はそこをほぐしてあげると、急に目の周りや肩の凝りが取れたり、腰の張りがゆるんだりします。やっていても不思議ですから、やられている人はもっと不思議かもしれません。
このときにかかと全体が腫れている人がいます。踵をどこから押しても痛い。内側も外側も痛いわけです。こういうひとは腰から下がだるくて疲れやすいひとが多いようです。ちゃんと統計を取ったわけではないので、あくまでも僕の印象です。
中医学的には、かかとは腎精に関係すると言われており、ここを刺激して活発にしておくと心身ともに精力的になり、年配の人は認知症予防にも良いとされています。東洋医学では、腎にはいろいろな意味があり、腎臓の腎も意味しますが、生殖機能や脳髄も意味することがあるのです。
こうやって踵を見てみるとなんだか「かかとって不思議だなあ」って思いませんか。
治療するたびに僕のなかで踵の印象は単なる骨を超えてどんどん膨らんでいます。
みなさんもこれを機会にご自分の踵をしっかり触ってみると面白いと思います。なにか新たな発見があるかもしれません。
身体は興味がわくと本当にいろんなことを伝えてくれています。それをいかに読み取るかが僕たち治療する側の力量を問われることにもなるのですが………。
受診お申込み
2020年6月以降、当院は完全予約制になっています。
メールフォームよりお申込みいただいた後、折り返しのメールもしくは電話をお送りいたします。
混雑状況によっては、ご希望に添えないこともございます。何卒ご了承ください。
お電話でのご予約も承っています。TEL 042-387-5884 (診療時間外及び診療中でも留守番電話になることがあります。必ず折り返しご連絡致しますので、お名前と電話番号をメッセージに入れてください。)