肺を動かす筋肉


 木枯らしが吹き、本格的な冬がやってきました。途端に風邪をひいている人も多いようです。そこで今日は呼吸器のかなめ肺の動きについて考えてみましょう。

 

 そもそも肺という臓器は自分では膨らむことも縮むことも出来ない臓器ということを皆さんはご存知でしたでしょうか。

 肺は胸膜という袋の中に大切に入れられています。

 この胸膜は胸郭と言われる肋骨を中心とした支持組織で守られています。

 そしてこの胸郭は肋間筋(読んで字のごとく肋骨の間についている筋肉)と横隔膜が動かしています。

 

 肺の呼吸運動を簡単に書き出してみると

1 外肋間筋と横隔膜が収縮

2 胸郭が広がる

3 胸膜内の圧が下がり

4 肺が受動的に広がり

5 空気が肺に入る

ここまでが息を吸うところです。

続いて

6 外肋間筋と横隔膜がゆるむ

7 胸郭が元の大きさに戻る

8 胸膜腔内の圧が上昇

9 肺が受動的に収縮

10 肺の中の空気が押し出される

となります。これが息を吐く動作です。

もっと思いっきり息を吐くときは内肋間筋という筋肉が収縮します。

 

 ここでわかることは、呼吸は胸郭を動かす筋肉の状態によって大きく影響を受けているということです。

 この内外肋間筋が硬くなって、横隔膜が硬くなっていれば胸郭は十分に広がりもしませんし、収縮もできません。

 最近、肩こりや首の痛みで来院されている人の多くにこの肋間筋の硬さをみます。

 これは胸郭そのものが首肩と連動して動いている証拠でもあります。

 逆に見れば、胸郭をしっかり使って動かしてあげれば首肩も動くようになる可能性があります。

 前々回、「元気のメカニズム」でお伝えした肺を鍛える呼吸法はまさにこの筋肉たちを全部動かすトレーニングだったのです。

 試しにめいっぱい胸を大きく開いてみましょう。姿勢が悪いと胸は開きませんよね。オードリーの春日さんのように偉そうに背筋を伸ばして、初めて胸郭が開いてきます。このとき肋間筋と横隔膜以外にも背筋の一部が使われています。この筋肉が首肩背中を底支えしています。深呼吸はこの筋肉を使わないとできないようになっています。

 呼吸の浅い人は残念なことにこの筋肉を使っていません。刺激が来ない筋肉はどんどん萎縮していきます。

 昔の人はこの深呼吸に使う背中の筋肉の所に風邪に関するツボを配置しました。ここが硬いと風邪をひきやすいと見抜いていたのです。

 

 これからの季節、一日に何回か背筋を伸ばして大きく息を吸い込み、しっかりと力強く吐き出す深呼吸をして、胸郭全体を使うトレーニングをみんなでやりましょう。





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