今日は先週に引き続き「二足歩行に進化した人間のからだ」の後編、肩甲骨を中心にした上肢について考えてみたいと思います。
四つん這いのときの上肢は前足としての機能が求められています。そのため地面からの衝撃を受け止め自分の体重を支えられるように肩甲骨が身体の側面に位置しています。
完全に立位で生活するようになると身体を支える必要がなくなるので、肩甲骨は背骨に近い位置に移動します。このポジションのほうが肩甲骨の動きが自由になり、つまり前足が上肢となって腕が自由に使えるようになります。
肩甲骨のポジションが変わるだけで肩関節の可動域(動く範囲)は大きく変化します。
このことはご自分でも簡単に実験することが出来ます。
顎を前に突き出すように背中を丸める姿勢(ようするに猫背)で腕を前に上げたときと、
顎を引いて背筋を伸ばした状態で腕を前に上げたときの腕の位置を確認してみてください。
わざと猫背を協調して肩甲骨を身体の側面に移動させると、腕を上げても真上まで上がりません。
顎を突き出したことで鎖骨の動きが制限されるからです。肩甲骨は肩関節の中で勝手に動いているのではなく、鎖骨によって体幹につながっています。そのため鎖骨が自由に動かないと肩甲骨は鎖骨に引っ張られて身体の背面よりも前面に近い側面に固定されてしまいます。肩が内に入った状態です。
肩甲骨を自由に動かすためには鎖骨が自由に動ける状態にしておかないといけないわけです。
猫背になるとなぜ鎖骨の自由が奪われるのかというと、鎖骨の動きが胸骨と肋骨の動きに依存しているためです。背中を丸めた姿勢では胸骨・肋骨の動きが小さくなってしまうため鎖骨もいっしょに動けなくなってしまうのです。
ですから肩が痛くて挙がらない、いわゆる五十肩というのはこういった肩甲骨を中心に胸郭を形成する骨全体の動きをひとつひとつ見直す必要があるのです。
肩甲骨そのものについてもチンパンジーなど類人猿と比較したデータがあります。
四足歩行が多い種族のサルほど肩甲骨の形状が小さく体側に位置しており、立位になる姿勢がもっとも多いオランウータンが一番人間に近い形状と位置にあります。肩甲骨の大きさや、背中側にあるというのは二足歩行となったことによる大きな変化だったようです。
股関節が下半身をしっかり支え身体の軸が身体の中央に位置したとき、肩甲骨が自由に動かせるようになる。人の身体は下半身と上半身が連動して進化し機能するように出来上がっていたことがこれらの事由からわかります。
臨床する場合でもこのことはとても大切な情報になります。股関節や肩関節の不調を訴えてみえる患者さんを診るとき、必ずこれらのことを頭に置いておかなければいけません。
つまり股関節の動きがおかしいときは肩関節も注意して診てみる必要があるということです。逆も然りです。肩ばかり治療してもなかなか良くならないときは股関節まわりを治療してみると良くなることがよくあります。本当に不思議ですが事実です。
次回はこの上半身と下半身のバランスに大きな影響を与える「身体の軸の捻れ」についてお話したいと思います。
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